寺子屋 度学寸塾 その2 千手観音    

 二十一世紀初年、日本におけるチベット仏教界では十一面千手千眼観音の灌頂が5月に東京でチャンツェ・チュージェ、リゾン・リンポチェ師より、11月18日には広島でケンスルリンポチェ・テンパ・ゲルツェン師によってとりおこなわれることとなり、何か深い因縁でもあるのではないかとも思われます。
 FPMTヘッド・ラマ、トゥプテン・ゾパ・リンポチェからは昨年、特にDNSJでは薬師如来の修行とニュンネーを行ずることを勧める指示を受けておりますが、FPMTでのニュンネーにおける本尊は十一面千手千眼観音様です。
 チベットではどうも千手観音は十一面観音のバリエーションとして考えられているような印象を受けるのですが、千手観音様は十一面に限るわけではなく、日本に伝わる胎蔵曼荼羅では二十七面、他漢訳経典に基づくものだけでも一面のものや五百面のものがあります。
 さて十一面のものに限ってお話すると、チベットでは主に二種あるようです。
 まずヂョカン寺のチョヲ・ランジュンガデンというソンツェンガムポ王ゆかりの像に由来するもので、もう一つのタイプが主要八手にしか持物が無いのに対し、多くの持物があります。こちらは横並び三面の柔和な顔がある上に同じく恐ろしい三目の顔があり、その上に同様の二つ並んだ顔が二段、一番上には仏面が一つという形で造られるのが多いようです。ソンツェンガムポ王流と呼ばれます。
 もう一方はゲロンマ・ペルモ(比丘尼ラクシュミー)流で、このインドの尼僧の前に現われて重病から救ったというもので、まず根本面が白、その右が緑、左が赤、その上は中央が緑、右が赤、左が白、その上に中央赤、右白、左緑の寂静相、その上に黒い三目の忿怒相、その頂上には赤い仏面となってます。東京で五月に灌頂が行なわれたのはこちらで、FPMTでのニュンネーの本尊はこのスタイルです。
 一方、日本では様々な造像例があるものの、代表的なのは前の三面は抜苦与楽の慈悲相、右三面は精進激励の白牙上出相、左三面は邪悪叱正の忿怒相、後頭部にある後を向いた一面は凡夫が煩悩に翻弄される愚かしさ、諸の困惑を笑い飛ばす暴悪大笑相、頂上一面が如来相となってます。十一という面数のいわれについては、菩薩の境地の段階である十地を登りつめ、最終的にそれを超えて仏の妙覚に到達することの表現とのことです。
 千手観音様は日本では十二支の子の守り本尊としても信仰され、六道の衆生のうち特に餓鬼を救う顕れの観音様として信仰され、また禅宗では日常的にこの観音さまのダーラニーが読誦され、それは中国でも日本以上にひろく行なわれ、またチベットでは四臂の観音様と並ぶ信仰を集め、大乗仏教圏では僧俗貴賎学識を問わず歴史的に慕われる存在といえましょう。
 ゾパ・リンポチェがまとめられたランリ・タンパの八つの詩のロジョンによる瞑想法でも千手観音様を本尊として観想します。
 ともかく多くの顔と眼で一切衆生に慈悲溢れる眼差しを向け、あらゆる者を救う千の手をさしのべて下さる千手観音様。皆さんも千手観音様と御縁を深められてはいかがでしょう。


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